
立教大学ESD研究センターのCSR調査で、昨年9月、P.T.グンゼ・インドネシアとP.T.グンゼ・ソックス・インドネシアの工場を訪問した。前者は、定番だけで日本の400色に対し1,683色、さらに特注色の高級ミシン糸を、欧米高級アパレル縫製用に生産していた。また、現地社員のSEが開発した生産・販売管理システムにより、多品種少量発注に素早く正確に対応していた。後者は、高度な技能を要するハイゲージ・ジャガード編機で、高級ソックスの多品種少量生産をしていた。
これらは、労働集約的な製品の生産と、低価格製品の大量生産を主とする発展途上国に、新たな可能性をもたらす社会的貢献である。これまでに訪問したタイとベトナムの工場同様、5Sが徹底し、現地社員のモラールも良好で、環境対策も規制をはるかに上回る高水準にあった。インドネシアで頻発する地震・津波の被災地救援活動をはじめ、地域貢献活動にも熱心だった。CSR報告書では、このように、海外でもCSRをしっかりと推進していることも訴求すべきと思う。
「礼儀作法が身につき、心も育つスクールに」との理念による、グンゼスポーツスクールの幼児・小学生に対する躾教育の紹介に感銘した。子どもを通わせている髙木翔子さんの「続けるにつれて、子どもたちの顔つきが変わっていくのがわかりました。楽しそうな表情のなかに、懸命な姿が見えています」とのコメントが、その成果を端的に示している。そして、次世代を担う子どもの教育への貢献は、最高のCSRだと思い至った。
第2に、昨年に続き、国内の全事業所でCSR検定をし、表紙に満点をとった社員39名の写真が掲げられていること。皆、いい顔をしており、グンゼの社風をビジュアルに伝えている。そこで、海外事業所でもCSR検定をし、満点をとった現地社員も掲載すれば、グローバルにCSRの推進に熱心なことが理解され、また、現地社員も喜ぶのにと思った。
第3に、東日本大震災の被災状況と被災地救援が、4頁にわたって紹介され、女子社員10名の被災地復興応援メッセージが、中程の各頁の右上に顔写真入りで掲げられていること。これらは、短期日で急遽企画されたはずだが、内容的にもしっかりしている。また、医療用弾性ストッキングをはじめて知ったが、その機能と、それを送ったことを記したのは、グンゼの心配りのありようを示すよいアイデアである。
第4に、事業所の環境負荷に関する数値データや職場環境についてのアンケート結果が、分かりやすく、時系列で開示されていること。多くが良好な傾向ないし水準にあり、悪化した事項もはっきりとさせ、改善目標を明示し、継続的にフォローしていること。また、風通しがよく、パワハラなどもない職場作りをめざし、アンケートをもとに統計的な分析をして、具体的な施策の開発と効果の確認を試みていることに感心した。
第5に、生物多様性への対応が2頁にわたって取り上げられていること。昨年、名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議が開かれ、2020年までに、自然資源の利用の影響を生態学的限界の十分安全な範囲内に抑えることや、自然生息地の損失の速度が少なくとも半減することなどが決められたが、それに沿った活動が掲載されている。
生物多様性をクローズアップしたのは評価できるが、「消費者が、原材料調達先での取り組みについての情報開示を求めている」との判断には同意できない。事実なら、生物多様性をメインテーマの一つとする立教大学ESD研究センターCSRチームの一員としてうれしい限りであるが、ごくごく一部の意識の高い消費者だけと実感している。
また、原材料調達先での取り組みについての情報開示をするには、すべての原材料調達先の仕入、生産の実態を調査する必要があるが、多くは企業機密のはずであり、国家のような捜査権も捜査能力もない企業が合法的かつ正確に実行できるのだろうか。また、守秘義務に反しないだろうか。意欲は評価できるが、勇み足ではないかと思う。
第2に、東日本大震災被災者への救援活動であるが、2億円の肌着は大変な量であり、数量ベースで示した方がピンとくる。また、具体性に欠け、内容も口調も高圧的な、被災者以外からの救援物資の要望がいくつも紹介されているが、それに押されて肌着を送ったのだろうか。
違うはずである。私は、いち早く救援物資が送られたことを報じるテレビニュースで、グンゼのステッカーが貼られた肌着のダンボールが積みあげられているのを見て、それを急遽送るためのトップの意思決定と、面倒な販売店との調整や仕分け・発送作業を迅速にこなした皆さんのがんばりに思いをはせ、「さすがグンゼ」と感心した。
要望に押されて救援物資を送ったと受け止められるとの懸念は、杞憂かもしれないが、もっと具体的な要望と、それにいかに対応したかを記すべきと思った。
第3に、製品紹介で、「進化」や「意外なところでの貢献」を打ち出すのは、CSR報告書にふさわしい方針だが、掲載した製品やサービスのどこがそうなのかの説明が不十分で、また、その方針にマッチしないものも含まれているように思う。もっと絞り込んで、明快な説明をすべきと思う。
以上、3つの疑問を呈したが、とりまとめに入った段階から作成までの時期に、大震災の勃発による社員の安否確認、被災者救援手配などに多忙を極め、また、大震災関連記事の企画作成や構成の大幅な変更などが必要となった状況で、よく、ここまでの報告書をまとめたと思う。これまでに比べればぎくしゃくしているが、グンゼの誠実な社風を反映した、良い報告書であることに変わりはない。
第三者意見を受けて
福田先生には、国内外の事業所へのご訪問などを通じ、CSR経営の観点から様々なご指摘をいただいております。今回のご指摘、ご評価を真摯に受け止め、今後のCSRの推進と報告書の作成に生かしてまいります。海外事業所のCSR活動も開示する情報を増やし、ステークホルダーの皆さまから忌憚ないご意見をいただけるよう努めます。