研究開発の歴史

当時、日本の最大の輸出品であった生糸。当社はより良い繭を得るべく、1903年に研究所の前身となる大成館を設立し、蚕品種の統一と優良種の製造を目指し研究を行いました。

また原料以外にも、均一な乾燥を実現する乾燥機や煮繭機の導入より、製糸技術が飛躍的に進歩しました。

img_history1890_01「大成館」蚕種製造とともに技術者の養成を行った
img_history1890_02蚕種の製造
img_history1890_03病毒検査

1925年、蚕事所、製糸試験所、理化学研究所を設け、研究組織を整えました。 この頃、生糸は靴下(ストッキング)用に淡色が好まれるようになり、当社でも白繭種の育成に力を注ぎました。またアメリカで伸び始めた絹フルファッション靴下(ストッキング)の需要に応えるべく、品質の改良を目的に、「郡是式多条機」を開発し、より多くの繭から同時に高品質な糸を巻き取ることが可能となりました。

1934年には生糸の製品化として、のちに当社の主力製品となるフルファッション靴下(ストッキング)の製造を開始しました。

img_history1920_01「理化学研究所」研究風景
img_history1920_02多条操糸機
img_history1920_03フルファッション靴下の生産風景

1936年に出現したナイロンは、絹業界に大きな衝撃を与えました。当時のナイロンの性状は、伸び・強度などで生糸を超えており、靴下市場への参入は明らかでした。1940年には当社も合成繊維の研究を開始しました。

1941年、戦時体制となり、軍需用の研究開発や、蚕蛹の高度利用の研究をすすめました。食料品、医療品、日用品など多岐にわたる研究開発を行いましたが、原料不足、品質などの問題により、のちに市場から撤退しました。

戦後すぐにメリヤスの生産が開始。この頃から加工事業への進出が行われ、その試験研究機関として繊維研究所を設置しました。その後、研究・事業の主体は生糸から繊維加工へと変移していきます。

img_history1940_01初期の裏毛メリヤスと
部分補強にナイロンを使用した絹靴下
img_history1940_02合成繊維の研究
img_history1940_03軍用機の生産
img_history1940_03落下傘のヒモの生産

1961年に最初のプラスチック製品が開発検討され、翌年には開発部を設置し、同年、半硬質の塩ビフィルムを開発。自社の婦人靴下用の包装フィルムとして生産を開始しました。その後も順次開発が進められ、変動する市場要請に応えていきました。

またこの頃、メリヤス、靴下が大きく伸長。多様な加工技術の開発により、品質だけでなく、生産性も大きく向上しました。また、ミニスカートの流行とともにパンティストッキングが爆発的人気に。当社もさらなる開発を行い、マスファッションの需要に応えていきました。

一方で創業以来続いてきた蚕糸研究は時代の流れに逆らえず、1975年にその長い歴史に幕を下ろしました。

img_history1960_01二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造設備の一部
img_history1960_02靴下生産風景

アパレル産業が成熟期に入ったことから、将来性のある非繊維分野の開発を重視。バイオテク、ロボット、エンジニアリングプラスチックス、エレクトロニクス、メディカルなどの研究室を設置しました。

プラスチック成型における新たな分野への取り組みとして、1990年の初めには、世界で初めてカラーコピー用転写ベルトを開発し、複合機業界に革新をもたらしました。また電子部品分野では、高機能タッチパネルの開発に力を注ぎ、技術力競争において高い地位を誇っています。

衣料用途以外での繊維素材の活用を模索する中、1984年、京都大学医学高分子センターを核とするプロジェクトメンバーとして生体吸収性ポリマーによる医療器材の研究に参加しました。
その後、体内で分解吸収される手術用吸収性縫合糸の実用化に1986年に国内で初めて成功、医療分野進出への歴史が始まりました。

繊維研究では、機能面に加えて生理的な面からも研究、快適サポート製品を多く開発していきました。

1998年、各地の研究所を統合し、研究開発部を設置。一本化した研究を行う体制を整え、相互間の技術の活用が進められました。

img_history1980_01転写ベルト
img_history1980_02吸収性縫合糸

2000年代に入り、プラスチック・電子部品・エンジニアリングプラスチックスなどの機能ソリューション事業は、環境意識の高まりや、デジタル機器市場の拡大により順調に推移、グループ経営を支える事業へと成長しました。

2010年には、開発事業部を発足し、低抵抗透明導電性フィルムやガラス代替フィルム、高耐熱光学フィルムの開発、販売を開始しました。

近年では、人々のQOL(クオリティ オブ ライフ)の向上に寄与すべく、人間工学、生理学、生理心理学をはじめとする多角的なアプローチによる繊維研究や、生体吸収性ポリマーの医療用途への開発研究など新たな価値の創出を目指しています。

img_history2000_01透明タッチセンサー
img_history2000_02無縫製インナー

機能ソリューションで培った「異種積層技術」「分散混合技術」などをさらに進化させた、導電性を持たせたフィルムの開発によるエネルギー分野での適応の検討や、特殊な機能を持つフィルムを開発し、農業分野などへの導入を目指しています。

また、医療・介護現場の意見を深くお聞きし、手術後の痛みなど、特定の悩みを軽減できる「健康衣療」の開発を継続して進めています。今後、自治体や医療機関、他企業などと連携し、必要とされる方々にQOLを向上できる健康衣療商品をお届けできるよう、取り組んでいきます。