GUNZE STORE(グンゼ公式通販)

お問い合わせ

English

資本コスト経営による企業価値の向上

取締役兼執行役員 財務経理部 部長 熊田 誠取締役兼執行役員 財務経理部 部長 熊田 誠

2020年度の業績評価

2020年1月、日本国内で初めて新型コロナウイルス感染者が確認される中、2020年度の経営方針と予算編成方針が示達され、新年度構想に向けてのスタートが切られました。
新型コロナウイルス感染症による影響がどれくらいになるのか、想像もつきませんでしたが、予算編成作業は粛々と進みました。
3月、大規模イベントの自粛や全国の学校に対する一斉休校の要請、商業施設の一部が休館になるなど、当社においてもアパレル部門やスポーツクラブ部門が直接的な影響を受けることになり、この時点で書き上げていた予算書は実現不可能なものとなって、見直さざるを得ませんでした。
5月、緊急事態宣言下、何とか決算発表にはこぎつけたものの、同時に公表されるはずの2020年度の業績ならびに配当予想は見送ることになり、中期経営計画「CAN20」第2フェーズも1年間の延長を決定しました。
8月、大変厳しい結果となりましたが第1四半期の決算と、見送っていた予想値を発表しました。その後、第2四半期の3カ月ではアパレル部門が増益に転じるなど、四半期決算が進むに連れて、前期との乖離幅は縮小し、第4四半期の3カ月は減収であったものの、全社で増益になるなど、売上高を除いて年間で業績予想値を達成することができました。
2020年度の売上高は1,236億円(対前期88.1%、対業績予想94.4%)、営業利益は46億円(同20億円減、同1億円増)、経常利益は50億円(同17億円減、同5億円増)、純利益は21億円(同22億円減、同増減なし)となりました。

2021年度の業績予想

2021年度は引き続き新型コロナウイルス感染症拡大の影響を織り込みながらも、総じて反転攻勢を見込んでいます。
前期に対しては、全部門が増収増益を計画していますが、中期経営計画「CAN20」に対しては、作成・公表時から大きく環境が変化したこともあり、機能ソリューション事業は増収増益になるものの、アパレル事業とライフクリエイト事業は減収減益の見込みとなって、明暗が分かれました。
プラスチック部門は環境対応型新商品の投入に加え、守山工場のサーキュラーファクトリー(資源循環型工場)実現に向けた取り組みを推進し、米国・中国を中心とした海外販売を強化します。
エンプラ部門は主力のOA市場向けのシェア拡大に加え、医療関連ならびに産業機器向けを拡販します。
メディカル部門は海外販売を強化するとともに、次期大型新商品の上市を目指します。
アパレル事業はECチャネルの拡販とコロナ禍の環境下におけるデジタル営業を推進します。
インナーウエア部門は天然素材回帰、カジュアル化、健康志向に即した新素材・新商品を主力ブランドに投入するとともに、差異化ファンデーションを強化して、レディスインナーを拡販します。
レッグウエア部門はレギンスやボトムカテゴリーの新商品を積極的に展開し、最適生産体制によるコスト構造を改革します。
不動産部門は投資効率を重視した物件管理を強化します。
スポーツクラブ部門は新型コロナウイルスの感染防止対策を万全にして、地域や店舗の特性に合わせた会員拡大を目指します。
設備投資については、前期と比べて総額で大きく変わりませんが、機能ソリューション事業は、大型投資があった前期からほぼ半減します。
一方、前期が抑え気味であったアパレル事業は約3倍、ライフクリエイト事業は約2倍の投資額を計画しています。
2021年度のグループ売上高は1,350億円(対前期109.2%、対中計90.0%)、営業利益は80億円(同33億円増、同増減なし)、経常利益は82億円(同31億円増、同増減なし)、純利益は56億円(同34億円増、同増減なし)と予想しています。

キャッシュフロー計画

2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、通常とは異なるキャッシュフローとなりました。
利益の減少によるキャッシュの減少を、自己株式取得の順延や政策保有株式の売却収入などで補い、フリーキャッシュフローは例年よりも増加しました。
その結果、有利子負債を圧縮するなど財務の健全性を優先でき、自己資本比率は一時的に上昇しました。
2021年度は業績回復によるキャッシュの増加は見込めるものの、長期借入金の約定返済や守山工場のリニューアル投資、前期から継続している自己株式の取得など、資金需要は旺盛となることが予想され、引き続き保有資産のバランスを勘案しながら、資金手当をしていく必要があると考えています。

株主還元方針について

中期経営計画「CAN20」では配当性向50%(ただし、1株当たりの配当金は75円以上)、総還元性向は多額の投資がある場合を除き100%を方針としています。
2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、いったんは自己株式の取得を見送りましたが、第3四半期決算を取りまとめる中で、業績も予想どおりに着地できる見込みとなり、合わせて政策保有株式の売却も順調に進みましたので、取得の実行を決断しました。
これにより総還元性向100%を継続することができました。
また、本年度の株主総会では115円の配当金を上程しました。
上述の還元方針に基づけば、配当金は75円、残りの還元原資を自己株式の取得に充てることになりますが、これでは大幅な減配となりますので、115円配当を据え置いて、総還元性向100%を維持することとしました。
当社のROE(自己資本利益率)水準は、残念ながら株主資本コストを上回るところまでは至っていませんので、現行の還元方針は当面継続されるべきであると考えています。

1株配当金と配当性向の推移1株配当金と配当性向の推移

資本コスト経営

2018年6月に改訂されたコーポレートガバナンスコードは、自社の資本コストを的確に把握した上で、事業計画や資本政策の策定、事業ポートフォリオの見直しや経営資源の配分、政策保有株式への対応について求めています。
当社も自社の資本コストを明確にして、2019年度より経営方針の中に取り入れました。

算出方法の策定
株主資本コストはピンポイントでいくらである、とするには議論があるかと思いますが、とりあえず一般的に用いられているCAPM(資本資産評価モデル)によって6.32%としました。
これを受けて、負債比率と株主資本比率の案分により、WACC(加重平均資本コスト)は5.15%となりました。次に、各事業部門別の資本コストです。
一般的には、事業リスクが類似する複数の専業企業のβ値(証券市場における市場連動リスク指標)を基に算出するところですが、当社の事業部門はニッチな分野が多く、複数企業を選定することが難しいことから、日経Needs業種分類に基づいて、同事業分野を主たる事業とする複数企業のβ値によって、各部門の資本コストを推計しました。
そして、その複数企業のD/Eレシオ(負債資本倍率)を用いて、WACCを算出しました。
業績評価指標の見直し
部門別のWACCが定まったことにより、業績評価指標も見直しました。
従来は、主たる評価指標を経常損益およびROA(総資産利益率)としていましたが、両指標とも資金提供者の期待リターンを反映しているとは言えないため、GVA(Gunze Value Added)に変更しました。
これはNOPAT(税引き後営業利益)に配当金を加えた額から、期末投下資本(総資産-無利子負債)にWACCを乗じた額を控除したものです。
GVAは投下資本に対する資本コストを利益から控除するので、低収益事業への投資に歯止めとなる一方、総額管理、絶対額管理であるため、成長性を加味した判断も可能となります。
GVAは2019年度16億円の赤字、2020年度はコロナ禍の影響もあり31億円の赤字と悪化しましたが、2021年度は6億円程度の赤字に圧縮できるのではないかと考えています。
設備投資判断の変更
従来は回収期間法によっていましたが、部門別WACCの導入を機に、NPV法(正味現在価値法)を採用することにしました。
主たる設備の償却期間における運転資本の増減も含めたフリーキャッシュフローに、WACCという割引率を加味した結果、より厳しい査定をすることになりました。
政策保有株式の縮減
原則として縮減の方針としていますが、片持ち保有の場合は、当該保有株式の時価に対して、当該会社に対するNOPATに配当金を加えた額の比率が、当該事業部門のWACCを超えることを保有基準としました。
相互保有の場合は、時価総額対比で同等の水準になるように縮減を図ることとし、毎年、取締役会で保有の必要性を審議しています。
2020年度は24銘柄・58億円の保有株式を売却し、2017年度末対比で30%削減という目標を上回る32%の縮減率となりました。
2020年度末の保有時価残高は151億円ですが、2021年度はこれを純資産に対して10%以内になるまで縮減しようと考えています。

ROE向上の取り組み

2021年度は「CAN20」の最終年度であり、次期中期経営計画を策定する年度でもあります。
ROEの「CAN20」目標値は5%以上ですが、仮にこれを達成できたとしても、株主資本コスト6.32%を上回るまでにはなりません。
これを一挙に満たすためには、時間の制約はあるものの、200億円規模の自社株買いで実現可能であり、その取得資金も政策保有株式の売却収入を全額充当すれば、7割方は手当てできることになります。
自己資本比率を大きく下げることなく、エクイティスプレッド(ROE-株主資本コスト)をプラスにするというものです。
誤解を恐れずに言えば、ROE向上のために「分母」(自己資本)を圧縮するという考え方はいつでも実行可能ですが、まず成長事業を伸長させ、不採算事業から撤退するなど、「分子」(純利益)を引き上げることを優先すべきと考えます。
総還元性向100%は現状の自己資本の維持を示しているに過ぎませんが、「分子」を伸ばす前に「分母」を太らすことはしないという意思表示であり、原資を確保できれば、それを成長案件に振り向けるという意味であります。
ここ数年の大型投資案件には、メディカル部門やエンプラ部門の新工場建設、プラスチック部門のベトナム新会社設立などがありますが、一方でインナーウエア部門では韓国生産からの撤退や、買い取りスキームを残しながらも中国での生産部門の大部分の撤退、さらに一部国内生産子会社の清算を実施しました。
また電子部品部門の台湾、中国における合弁解消や、国内の動・不動産関連では寮舎や社宅の除売却、政策保有株式の売却など、投下資本の転換を進めてきました。
今後は守山工場のリニューアル投資などに対する置き換え案件を抽出し、投下資本の一方的な拡大を抑制しながら、債券格付けに影響を与えない程度に自己資本比率を押さえて、グリーンボンドやローンなどの調達手段の拡充も検討していきます。
エクイティスプレッドをプラスにするためのもう一つの手段は、「分子」の伸長です。
営業利益の規模感で言えば、次期中期経営計画では100億円程度が目指すべき目標であると考えています。
この水準に至れば、当然GVAは全社トータルで黒字になりますが、全事業部門が黒字にはならないと想定されますので、黒字のさらなる伸長と赤字の除去という両面から、事業再編やポートフォリオの見直しを検討していくことになります。
最後に、資本コストは前提条件や推定の仕方によっては、一定のレンジで示されることが適切と言われています。
次期中期経営計画では現状のコストを見直すことも考えられますが、設定した株主資本コストを上回るROEを目指すことに変わりはありません。
8%あるいは2桁以上という率の追求の先には、たとえ「分母」が拡大することになったとしても、資本コストというハードルレートを超えられるだけの「分子」を生み出す力、つまり事業力を育てていくことが大切であり、ひいてはそれが企業価値を相乗的に向上させることにつながると考えています。

「CAN20」第2フェーズGVAの推移「CAN20」第2フェーズGVAの推移

当ウェブサイトでは、お客様の利便性の向上およびサービスの品質維持・向上を目的として、クッキーを利用しています。
お客様のブラウザの設定によりクッキーの機能を無効にすることも出来ます。詳細はプライバシー・ポリシーをご覧ください。