写真左から、イシダ(総務課)、オオツカ(総務課)、マキノ(設備課)
グンゼは、「持続可能な事業基盤づくりを進め、グローバルに選ばれ続ける会社となる」ことを目指して、さまざまな取り組みを進めています。その中でも、特に成長への期待が高まっているのがエンプラ事業部。
今回は、そのエンプラ事業部・江南工場に新たに誕生した事務所棟をテーマにしたインタビューの後編をお届けします。建設に至る背景や想い、ZEB認証への挑戦についてご紹介した前編に続き、後編では、完成した建物がもたらした日々の変化や、この場所に込めた期待とこれからの可能性に迫ります。
人が集まり、関係が育ち、事業成長が加速する空間設計
―― 「誰もが働きやすい建物」を目指す上では、どのような工夫を盛り込まれたのでしょうか?
マキノ 今回、新事務所棟と工場エリアをつなげる渡り廊下をつくったのですが、これを実現することは私の夢でもありました。
というのも、この江南工場は、事業の成長に合わせて少しずつ建物を増やしてきたため、動線が複雑になり、移動などさまざまな場面で時間のロスが発生していたからです。
そこで考えたのが、約18メートルある新事務所棟と工場エリアの間を渡り廊下で繋げるということでした。この事務所建て替えのタイミングで実現できなければ、もう二度とチャンスはないと思っていたので、実現できて本当に良かったです。
また、食堂も工夫しました。新しい食堂は、食事をするだけではなく、簡易的なミーティングでも使ってもらえる場所にしたいと考え、コンセントのあるボックス席を作りました。
その他にも、いろいろな場所にスロープをつくって段差をなくしたり、消火器や下駄箱をすべて壁に埋め込んで廊下に障害物がないようにしたり、誰もが働きやすい建物にするためのさまざまなアイデアを盛り込みました。
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渡り廊下 | 食堂 |
―― 実際に新事務所棟での業務がはじまってから、どのような成果や変化がありますか?
マキノ さきほどお話ししたような高効率空調や断熱材、照明器具による省エネと、太陽光発電による創エネを組み合わせて、従来の建物で消費される一次エネルギーを基準に、削減率102%を実現することができました。
数字的な成果以外では、渡り廊下ができて全棟がボーダレスで繋がったことの効果はすごく大きいと思います。今では、1日に延べ数百人の方が渡り廊下を往来していますが、それによって部署間の連携が取りやすくなって、コミュニケーションも格段にとりやすくなりました。
コミュニケーションのスピードは事業成長のスピードに直結していると思うので、そういう意味では、いろんな判断やすり合わせが迅速に行えるようになり、実際に事業の動きが早くなった実感があります。
イシダ 私も動線の改善によって、人の往来は明らかに増えていると思います。以前は総務課に来られる方も、外から来て、入り口の小窓から「ごめんください…」みたいな感じで来ることが多かったんですけど、今は渡り廊下を通じてスムーズに来てもらえるので。すごくコミュニケーションがとりやすくなりましたね。
オオツカ 私も渡り廊下のおかげで生産現場にスムーズに行くことができ、すごく助かってます!
イシダ 食堂横の総務事務所内に各職場宛の書類ボックスを設置したことによって、食事や書類集配時に、事務処理や備品関係の質問・相談がしやすく、コミュニケーションが円滑になったという従業員の皆さんの声も聞くようになりましたね。
マキノ 業務的な改善以外の面で言えば、やっぱり食堂の利用者数はかなり増えましたよね。
イシダ 3〜4割増しぐらいかなと思います。アクセスしやすくなったことも大きいですけど、やっぱり食堂が新しくなって、雰囲気も変わったのが大きいんじゃないかなと。
以前の食堂はあまり開放感がなくて、ただご飯を食べるだけの場所っていう感じで、特に女性が利用しにくく、みんなが集まるような場所ではなかったんです。私も、新しくなってから食堂を利用し出した一人です。
マキノ ゆったりリラックスして食事している人が多いですよね。特にボックス席は人気で、お二人もいつもボックス席で食べてますよね。
イシダ 確かに最後までいる(笑)。使い心地いいよね?
オオツカ はい。ゆっくりできます。きれいで、とても居心地がいいです。みなさんのモチベーションアップにもつながっているんじゃないかと思います。
イシダ 食事もすごくおいしいので、それを楽しみにして午前中は頑張れます。メイン料理と小鉢をそれぞれ3種類から一つずつ選ぶことができますが、小鉢の1つはデザートなので、デザートを楽しみにメニューをチェックしている方もおられますね。
オオツカ お昼休憩でご飯を食べていっぱいお話しして、楽しい気持ちでまた仕事に戻れてます。普段から楽しく元気に仕事ができるのは、食堂の雰囲気やおいしいごはんのおかげかなと思ってます。
イシダ そうそう、リフレッシュして、午後からの仕事も頑張れるよね。
マキノ 来訪されたお客様に食堂を利用いただくこともあるのですが、「皆さん、すごく楽しそうに食事されてますね」ってよく言っていただきます。
そう言ってもらえると、あらためてここがコミュニケーションの場になってるんだなと感じますし、事業部の活性化にもつながっているんだなと実感しますね。
イシダ あと、社外の方が食堂を見て、「ここ、カフェかと思った」「レストランができたのかと思った」っておっしゃることもありました。
イシダ 車で通る道路から事務所が見えるので、家族や友達に「あの事務所で働いているんだよ」というと、「きれいでいいね」「かっこいいよね」と言ってもらえます。江南工場の顔となるオフィスを目指していたので、心の中でガッツポーズをしてます!
オオツカ 毎日働く職場であり、私の大好きな場所となっているので、褒めていただくと自慢げな気持ちになります。
―― プロジェクトが成功した背景には、どんな組織風土やチームの力があったのでしょうか?
マキノ 乗り越えるのが困難な壁があったとしても、進むべき方向性が決まれば、実現に向けて一致団結できる文化があると思います。
特にエンプラ事業部は、自由闊達な雰囲気もありますので、前例がなくても、いろんな遊び心のあるアイデアをどんどん出し、実現に向けてチャレンジできる風土があります。
イシダ 管理職の方も含めて、みんな仲が良いのも成功の一つの要因なんじゃないかと思います。
オオツカ 管理職の方々も優しい雰囲気の方が多いように思います。ピリピリしていないから従業員の皆さんも、ちょっとした相談や質問をしたり、会議などで意見が言いやすかったりするのかな、と思っています。
イシダ 工場全体が一つの家族みたいな雰囲気もありますよね。私は工場併設の社宅に住んでいるので、赤ちゃんから見ていた子が社会人になっているのを見ていたり、長年家族ぐるみの付き合いも続いていたりして、仕事だけではなくプライベート面でも相談できる人が身近にいて心強いです。毎年工場で行っている労使共催のビアガーデンも、すごく盛り上がります。こういうところからも工場全体の一体感が生まれてきているのかもしれないですね。
マキノ そうですね。また、基本的にこういった大きなプロジェクトを江南工場主導で進められるのは、もちろん会社の文化があってこそですが、自分たちで考えて実行していくことができるエンプラ事業部の自走力があるからだと思います。
人・地域・会社をつなぐ場所に
―― 最後に、今後この新事務所棟が、どのような場所になることを期待していますか?
マキノ 新事務所棟を建てるにあたって、この江南工場の“顔”となるような建物にしたいという想いがありました。
見た目だけの話ではなく、グンゼの長い歴史の中で受け継がれてきた技術や、より良いものづくりを目指す姿勢、そういったストーリーを感じ取ってもらえるような建物にしたかったんです。
そしてそれは、今だけの話ではなく、10年後、20年後、30年後も、この建物がグンゼの理念やストーリーを語り続けてくれるような存在であってほしいと思っています。
そうしたグンゼの顔としての役割を果たしながら、いずれは地域にとっての“顔”にもなっていってくれたらうれしいですね。これまでは、ここにグンゼがあることを知らなかったという方も少なくなかったので、そういった意味でも、この建物が地域とグンゼをつなぐ存在になればと思います。
イシダ 私の年代だと、グンゼはインナーウエアやストッキングでメジャーな会社ですし、江南工場では新しい事務所や工場も建設されていることもあり、知り合いから「うらやましい」と言われたりすることもあります。
昔からライフワークバランスも取れていますね。私の子供が小さい時のエピソードですが、運動会や地域の行事では、当時からグンゼ勤務の父親の参加率がとても高く、子供のお友達が「お父さんもグンゼで働いて」と言っていたと聞いて、びっくりしたこともあります(笑)。これからもこの事務所を起点に、働きやすい、世間からも認められる会社であり続けたいです。
オオツカ こんなにもきれいで様々な人にフィットするように考えられた職場環境で、これから先も仕事ができることをうれしく思います。
マキノ グンゼには、創業以来ずっと大切にしてきた「人間尊重」という考え方があります。この建物が、ここで働く皆さんの満足度を高め、グンゼに関心を持ってくださる方々との新しいつながりを生み出していけるような場になっていってほしいですね。
そうしたつながりを積み重ねながら、企業としても持続的に成長していける拠点にしていければと思います。
