写真左から、マスダ(営業課)、ウチヤマ(商品開発課)、キクチ(営業課)
狭心症や心筋梗塞、糖尿病などを抱える患者にとって、負担の少ない治療法として広がるカテーテル治療。グンゼのエンプラ事業部は、その製造に欠かせない極細フッ素樹脂収縮チューブの製造・販売を通じて、医療分野への展開と事業拡大を進めています。
今回は、その挑戦の歩みを関係者の声とともにお届けするインタビューの後編です。
前編では、一通の問い合わせから始まった医療分野への挑戦と、試行錯誤の末にたどり着いた“逆転の発想”を紹介しました。
後編では、それを実現へと導いたチームの文化と、未来に向けた挑戦に迫ります。
―― エンプラ事業における「営業」と「開発」は、それぞれどんな役割やスタンスを求められますか?
マスダ グンゼには、昔から「営業がモノをつくり、製造がモノを売る」をモットーとするものづくりの姿勢があるのですが、エンプラ事業部の営業もまさにそうです。一般的にイメージされる「営業」とは少し違うと思っていて、カタログにあるものをそのまま届けるんじゃなくて、お客様が本当に必要としているものを一緒に作っていくことが役割だと思っています。
実際、製品の9割はカスタマイズ品で、カタログ品はほんの一部です。最初のきっかけとしてカタログを使うことはあっても、そこから「もっとこうしたい」「こんな使い方をしたい」といった声を引き出して、それを開発に伝えて形にしていく。その繰り返しが、唯一無二の製品につながり、お客様との関係性も深まっていくんだと思っています。
キクチ 営業の中ではよく「私たちは販売員じゃない、営業なんだ」なんて言っていますが、それはつまり、お客様に寄り添って課題と向き合い、一緒に形にしていくことが私たちの仕事だということです。
ウチヤマ 私たち開発も、一般的にイメージされるような開発部門のように、営業がヒアリングしたお客様のニーズを開発に持ってきて、そこで初めて聞くというよりは、私たち一緒にお客様の所に行って、直接お客様のニーズをヒアリングして、それを形にしていくことが多いんです。
キクチ 私が開発部門から営業に異動したのも、開発者だったころにマスダさんと全国を回っていた経験がきっかけでした。一緒にお客様の話を聞く中で、「今よりもっとお客様と近い距離でやってみたい」と思って、異動希望を出しました。
ウチヤマ マスダさんが言っていた「営業も技術を知らなきゃ」というのと同じで、開発も開発だけをしていればいいわけではないと思っています。
たとえば「高収縮が大事」と言われても、その背景がわからないと意味がない。カテーテルの構造との相性だったり、使用時の条件だったり、実際の使われ方を知ることがすごく大事なんですよね。
お客様から製品の実物を見せてもらう機会はほとんどありませんが、試作品の評価結果や次の方向性について、直接話し合いを何回も重ねることで、「こんなものができたらいいかも」って発想につながるんです。
それが0から1をつくることもあれば、既存品にちょっと工夫を加えるような、1を2にするようなこともある。そういった意味で、開発も直接お客様の声を聞くことが大切だと思うようになりました。

DNAとして受け継がれる、挑み続ける姿勢
―― 皆さんの感じる「エンプラ事業部らしさ」は、どんなところにあると思いますか?
マスダ 私が入社した当時、エンプラ事業部はまだ立ち上がって間もない小さな事業でした。売上も少なかったですし、正直、他の事業部からも「何をやってるの?」という目で見られるようなところがあったかと思います。
でも、そのような中でも先輩たちはとにかくパワーがあって、チャレンジ精神に溢れていました。本社や役員から言われたことをそのままやるんじゃなくて、自分たちで道を切り開いていこうという雰囲気がありました。
また、失敗しても、それを責めるんじゃなくて、むしろ「いいやん、どんどんやっていこうぜ」みたいな、挑戦を肯定する空気がありましたね。
新入社員だった私は、そういう姿をすごいなと思って見ていました。今でも、そういった「失敗を恐れずにやってみる。やりながら考える」というDNAは受け継がれていて、これからもずっと残っていてほしいなと思っています。
キクチ 私やウチヤマくんが入社する前の話ですが、昔は血気盛んな先輩が多かったというのはよく聞いてました(笑)。
でも、そのチャレンジ精神が今にもつながってるんだなというのは感じますね。
ウチヤマ 私が入社したときも、「今年の新入社員、エンプラっぽいね」なんて言われました。「“エンプラっぽい”って何だろう?」って思っていましたけど、先輩から話を聞いたりしていくうちに、フランクで、内にこもらず、なんでもまずはやってみる。そういう雰囲気を“エンプラっぽい”と表現するのかなと感じています。実際、そういう人が多いですしね。
キクチ 新入社員でも、事業部長が同席しているような場で、臆せず自分の意見をどんどん言うのもすごいことだと思いますし、そういう雰囲気こそがエンプラ事業部らしさだと思います。
自由に意見が言える空気があるからこそ、新しいアイデアも生まれやすい。そこが、ものづくりの原動力にもなっていると思います。
ウチヤマ 職場の雰囲気もそうですね。商品開発課の事務所はチームごとに机は分かれていますけど、全体的にはフリースペースっぽくて、話しやすい空気があります。昼休みも、違うチーム同士で自然に話したり相談したりする場面はよくあります。
私たちの世代は、ここ数年ずっと新卒が入ってきているので、若い層が厚くなってきていて、より気軽に話せる雰囲気も強くなっていると思います。

マスダ お昼なんかも、若手の開発メンバーがこの部屋でワイワイ話しているのを見かけて、「なんかええなぁ」って思います。チーム関係なく仲良くしているのが、すごくいいなって。
ウチヤマ 雑談が多めで、あまり仕事の話はしてないですが(笑)。
マスダ でも、日頃からフラットに話せる関係性があるっていうのは、大事だと思いますよ。
寄り添い続けることで、未来を切り拓く
―― 今後、エンプラ事業部としてどんな展開を描いていますか?
ウチヤマ 私はもともと、カテーテル製造用の収縮チューブの開発を担当していましたが、今はその横展開として「ガイドワイヤー」という医療材料も手がけています。
収縮チューブと並ぶ、もう一つの柱に育てていきたいという思いで取り組んでいて、両方を担当しているからこそ得られる経験や視点もありますし、ユーザーとも幅広い話ができるという強みも感じています。
キクチ ユーザーとの関係性が深まってきている今だからこそ、収縮チューブやガイドワイヤーに続く、新しい商材も生み出していかなきゃいけないと思っています。
それと同時に、今あるこの二つの製品もしっかり広げていく必要があって。新しい案件を確実に取っていくこともそうですし、地域的な展開もさらに広げていかなきゃいけない。
最近はインドにも行って現地の様子を見てきましたが、今後は中国やアメリカなど、新たな国・地域への展開もさらに広げていかなければいけないと感じています。
マスダ クリーン工場が増設されたので、まずはそこでしっかり生産体制を増強していきながら、お客様の信頼を勝ち取り、どんどん作って、動かしていく。そして、さらに次の工場が必要になるような拡大のサイクルを生み出していきたいですね。
そのために、今は汗かきながら、コツコツと新しい井戸を掘っている最中です。次の成長につながる水脈を探しているところなんですよね。
うちの強みは、やっぱり開発のメンバーが実際にお客様のもとへ行って、信頼を積み上げているところです。そうすることで、「こんなものもできませんか?」といったカテーテル以外のご相談をいただくこともあります。そうやって商品群が増えていくのは、やっぱり大きいです。
カテーテルの分野って、本当に終わりがないんです。どんどん新しい機能が求められるし、それに対応していくことで、他社にはできないものができるようになっていく。
エンプラ事業部がずっとやってきたことを、これからも変わらず続けていくだけです。
