2025.11.14
グンゼのミシン糸を世界に
若手駐在員のベトナムでの挑戦
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中国、インドネシア、ベトナム、バングラデシュの各拠点でグローバルに事業を展開するグンゼの繊維資材事業部。今回は、ベトナムに駐在する2人の若手社員に話をお聞きしました。アパレル縫製産業の最前線であるベトナムの地で、2人は常に世界市場に目を向けています。
Section 01 世界中のメーカーが集まる、アパレル・縫製大国!
東南アジアの中央部に位置するベトナムは、南北に細長いS字の形をした国です。人口約1億人、平均年齢は30歳前後と若く、近年の経済成長率は年7%ほどで推移するなど、目覚ましい発展を遂げています。海外からの投資も相次いでおり、アパレル産業、とりわけ縫製産業は特に活況です。
ベトナムは今や世界第3位の繊維・縫製品輸出国。高い縫製技術と安定した品質管理システムを強みに、スポーツウェアから高付加価値衣料まで、あらゆる製品を国外に広く送り出しています。また、自動化やデジタル化による生産効率向上の取り組みにも積極的で、コスト面の優位性だけではなく、持続可能かつ高品質なものづくりの体制が世界中のメーカーから支持されています。
Gunze Hanoiは、ベトナムの首都ハノイから車で1時間ほどのニンビン省に製造工場があり、北部ハノイと南部のホーチミンに営業事務所があります。ニンビン省は海外メーカーが多く進出する産業集積地として知られています。営業部門は、中部のダナンで線引きをして北部エリアをハノイの営業スタッフが管轄、南部エリアをホーチミンの営業スタッフが管轄しています。
Gunze Hanoi 概要
(2025年11月時点)
Gunze Hanoi
営業事務所が入居しているホーチミン市内のビル
- 事業:縫製用ミシン糸の製造・販売、繊維資材の輸入・販売
- 敷地面積:約1.5万㎡
- 従業員数:189名
(営業:ベトナム人5名、日本人2名 生産:ベトナム人180名、日本人2名) - 生産量:650トン/年
担当者情報
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Gunze Hanoi
営業部販売課 課長 竹内弾 -
Gunze Hanoi
製造部製造課 課長 田端謙太
Section 02 活気あふれるマーケットで、2人はどのような役割を担っているのか?
はじめに、現在の仕事内容について教えてください。
竹内:私は営業担当として1年前にホーチミンに赴任しました。ミシン糸の顧客は縫製工場がメインですが、商社やアパレルブランドに直接営業活動を行うことも少なくありません。また現地の営業スタッフを取りまとめる役割も担っており、チームで営業戦略を練りながら、市場調査や新製品の企画・提案といった様々な業務を進めています。
田端:私も竹内さんと同じタイミングでベトナムに赴任しました。製造部門の責任者として製品の品質管理、生産計画の進捗管理、現地スタッフの確保と育成などの業務に携わっています。例えば染色工程であれば、調色に必要な染料と薬品類の特性と選定方法を知り、色味の違いを数値で判別できる測色機の操作手順を覚えなければいけません。個人の経験に頼るばかりでは品質の安定にも限度がありますので、これらをマニュアル化して、誰もが同等の技術を身につけられるよう日々努めています。
繊維資材事業部にとってベトナム市場における近況を教えてください。
竹内:日系企業かつベトナム北部エリアに製造工場を構えている強みを活かして、特に北部で日系アパレルブランドを取り扱う縫製工場様からご愛顧いただいています。また、染色情報をすばやく共有できるシステムにより岡山県津山市にあるマザー工場と中国、インドネシア、ベトナム、バングラデシュの海外拠点で「同一商品、同一品質」が実現されていることも評価につながっています。
「同一商品、同一品質」ですか?
竹内:はい。繊維資材事業部の最重要テーマです。IT技術を活用したグローバル連携によって、世界中で安定した品質の製品を提供できる、というのは私たちの強みです。
すごいですね。田端さんはどうでしょう? 製造目線で、どんな独自性があると感じていますか?
田端:糸に風合いを付与する独自の撚糸加工技術とそのための設備を自社保有している点は、繊維資材事業部の他の海外拠点にない特色です。一貫した品質管理が可能であること、製品を安定供給できる体制が構築されていることは、顧客の皆様にとっての大きな安心材料になっていると思います。
竹内:製品でいえばポリエステルウーリー糸の「ポリーナ」。ふわっとした柔らかい質感やその耐久性がインナーウェアなどに最適だと好評をいただいており、継続的な需要があります。
なるほど。やはりグンゼならではの技術があるのでしょうか?
田端:やはり、染色技術ですね。ポリーナは他の糸より密着度が高いため、染料を均一に浸透させることが難しく、前処理の段階で染料や薬品を特別に微調整する必要があります。ただ、その難しさをクリアし、安定して同じ色を提供し続けられる点が、他社にない独自性と言えます。その質感と、要求水準を満たす色の精度は「グンゼだからこそ」と評価をいただいており、グローバルに事業を展開する某アパレルメーカーの方からは、他国の縫製工場もすべて「グンゼのミシン糸で統一」というお話を、新たにいただいています。
Section 03 中国、インドネシア、バングラデシュ― 他拠点との連携とGunze Hanoiの役割
繊維資材事業部においてGunze Hanoiはどのような立ち位置なのでしょうか?
田端:直近の新しい動きとして、伸長性に優れたコールゴムや、パッカリングなどの縫製工程のトラブルを軽減するファインμ(ミュー)といった、これまで取り扱っていなかった製品をGunze Hanoiでも製造拡大予定です。設備投資も積極的に行っており、繊維資材事業部内での存在感も高まってくると思いますので、事業部全体の製造をしっかりリードできるよう、体制を整備していきたいと思います。
ベトナムで製造するようになった経緯を教えてください。
田端:これまでコールゴムは中国で、ファインμは日本で製造されていました。ただ、コスト面においては中国・日本よりベトナムがより安価という現状がありますので、そのメリットを生かすために、生産量を分け合う分割生産体制にシフトしています。
グンゼグループにおけるGunze Hanoiはどのように捉えていますか?
竹内:ベトナムは世界の縫製産業の最前線なので、業界のあらゆる情報が入ってきます。新たな技術やトレンドにアンテナを張りながら繊維資材事業部の他の海外拠点に先駆けて動き、グループ全体の事業展開に還元する。そんな先導役を担う組織だと考えています。
Section 04 営業と製造のリーダーとして、チームマネジメントに挑む日々
ベトナム赴任はどのように決まったのですか?
竹内:赴任が決まる2か月前にハノイに出張し、帰国してから1週間ほどでGunze Hanoiへの異動のお話がありました。ベトナムに駐在している日本人の営業はGunze Hanoiの社長しかおらず、ベトナムは南北に細長い国ですので南部エリアの営業強化を検討されていたようです。
竹内さんに声がかかったのはなぜだと思いますか?
竹内:私は基本的にどこでも生きていけると思っていて、そのことが伝わったのかなと(笑)。南部のホーチミンはベトナムの縫製産業が集まる大きなマーケットですので、そこを任せていただけるとあって意欲が高まりました。田端さんはどんな経緯だったのですか?
田端:特に前触れなくといった感じでした。繊維資材事業部は海外展開を進めているので、いつかはどこかの国で働くこともあるだろうなと、漠然とした予感はありましたね。
赴任の打診があった当時はどんな気持ちでしたか?
竹内:海外で働きたいと入社した頃から会社に伝えていたので、もちろん即答です。驚きがなかったわけではありませんが、一つの目標が叶ったとすごく嬉しく思ったことを今もよく覚えています。
田端:知らない場所で生活することの不安は多少なりともありました。しかし、ワクワクする気持ちが勝りましたね。そう簡単に経験できることではありませんし、期待の方が大きかったです。
日々の業務で「ベトナムならでは」を感じることはありますか?
竹内:基本的にオープンマインドな方が多く、こちらからきちんと段取りを踏めば商談や打ち合わせの機会をいただくことはそれほど難しくはありません。食事に誘っていただくこともよくありますし、仕事を通じて人生をもっと楽しもうとしている方が多い印象です。
普段のやり取りはどのように?
竹内:日本では馴染みがないかもしれませんが、Zaloというアプリを使うことがほとんどです。
田端:LINEのようなアプリですね。ベトナムのビジネスシーンでは浸透しています。すごく便利ですよ。
営業活動で意識していることは?
竹内:コストに関しては、ものすごくシビアです。折り合いがつかず話がまとまらないケースも少なくありません。それでも、簡単に引き下がるわけにはいきません。営業先の縫製工場の方々の反応が良くなければ戦略を練り直し、大本であるアパレルメーカーに直接アプローチして交渉することもあります。品質面での優位性を丁寧に伝えることでご理解をいただいています。そうすることで、単なる価格競争に陥らないよう努めています。
製造の業務ではどうでしょうか?
田端:製造に携わる私の感覚でいえば、ベトナムでの事業は予定外の短納期の発注が比較的多い印象ですね。日本で製造の仕事をしていた頃より、スピードが求められると感じています。ただ、現地スタッフの皆さんもそのあたりはよく心得ていて、スパッと切り替えて動いてくださるので、すごく助けられています。
限られた時間のなか、品質を維持するのは大変ですね。
田端:たとえ納期が短いものでも撚糸や染色、製品巻きといった各工程で、汚れが生じていないか、色調の異常がないかを丁寧に確認しています。さらに、色味や強度を数値で管理し、グンゼの基準を外れないよう徹底して品質を担保できるよう万全を期しています。
現地スタッフの方々とのコミュニケーションで工夫していることは?
竹内:現地の営業スタッフとは基本的に英語と日本語でコミュニケーションを取っているのですが、日本語独特のニュアンスが伝わらないと感じることもあります。ですので、こちらの意図をはっきり言葉にしようと、日本語がわかるスタッフに対しても曖昧な表現は避け、英語の文法に合わせて話すように気をつけています。簡潔な指示だけでなく、その背景まで説明すると意図を汲んでくれることが多いです。
田端:製造現場でも日本語を学んでいるスタッフが多いですし、会話自体に苦労はないですね。改善の提案も積極的で、仕事熱心な方ばかりです。人材確保は継続的に取り組まなければいけない課題ですので、職場環境や評価基準を常に見直しながら定着率を高めていきたいと考えています。
ベトナムでの仕事には、どんなやり甲斐がありますか?
田端:ベトナムはまだまだ成長する国だと思いますし生産量の拡大も見込めるので、新しい設備の導入を積極的に進めています。日本にいた頃は経験することのなかった、工場全体のマネジメントや人材育成といった分野にも携わることができました。業務を通じて自分自身の考えやアイデアが誰かの成長に役立つという実感を得られたことは、こらからのキャリアにもきっと生かされると思います。毎日の業務が大変であることは否定しません。しかし、とても充実しています。
竹内:個人的な感覚でいえば、アパレル関連の縫製産業においては国境はないと思っています。日頃の営業活動でお会いする顧客の中には、繊維資材事業部が拠点を置く中国、インドネシア、バングラデシュで事業を展開する企業も少なくありません。ベトナムでの実績がそれらの拠点の新規獲得につながる可能性は当然あります。自分の頑張り次第で成果はどんどん大きくなるので、やり甲斐はすごくありますよ。
自分自身の変化を感じることはありますか?
竹内:「意思決定の早さ」と「業務組立の効率化」が向上したと感じます。ベトナムはたくさんのチャンスがころがっている国ですので、提案機会の量をなるべく減らさないように計画を立てています。併せて営業スタッフから判断を求められることも多く、状況の確認と戦略に即した判断を短期間で行わなければならない点が日本の業務と大きく異なります。
田端:製造の現場で品質を支えるという業務から、管理職的な立場で工場全体の運営や人材の確保と育成を担うようにもなり、視野がすごく広がりました。文化や考え方の違いも面白く、密度の濃い日々を過ごすことができています。ベトナムでしっかり経験を積んだ後、いつか機会があれば他の海外拠点でも働いてみたいですね。
最後にお聞きします。これからチャレンジしたいことを教えてください。
竹内:世界中のアパレルメーカーの縫製産業が集まるベトナムに赴任して、ビジネスの規模が日本にいた頃とは比較にならないほど大きいことに圧倒されながらも、そのような環境で自身の力を試せることに、このうえない充実感があります。世界基準で見れば「グンゼ」の知名度はまだまだ十分ではありません。現地マーケットの動向を注視し、展示会などにも積極的に足を運びながら、欧米企業など世界のアパレルブランドへの新規開拓を強化していきたいと思います。
田端:製造スタッフのレベルアップにつながる施策をもっと進めていきたいと考えています。品質を守り続けることはもちろん、自分自身のマネジメント力も高めて組織の拡大に貢献したいですね。繊維資材事業部の皆さんから「Gunze Hanoiに聞けばわかる」と、頼りにしていただけるような存在を目指していきます。
グルメ、観光、カフェ巡り。
2人はプライベートでも
ベトナムライフを満喫!
日本と比べて不便と感じることは少なく、快適に過ごしています。ホーチミンで暮らすようになって最初に驚いたことは、高層ビルの多さですね。50階以上のビルがあちこちにあります。食生活では、ベトナム版お好み焼きと言われているバインセオが好きです。休日は、現地で働く日本人の方々が集まるバドミントンサークルで汗を流しています。
ベトナムはカフェがものすごく多いですよね。通りに何軒も並んでいます。大手のチェーン店もあれば個人経営もあり、メニューも内装もおしゃれなので、時間があるときは新規開拓を満喫しています。あと、パンのおいしさにもびっくりしました。赴任して間もない頃に竹内さんと2人でハノイの観光スポットを巡ったのも良い思い出です。