環境

グンゼグループは、事業活動を通じて環境負荷を低減する取り組みを進めています。プラスチック分野では廃プラ削減や環境配慮型・循環型原材料への転換、事業部門間の垣根を超えたリサイクル商品開発など、資源循環に向けた活動を強化し、サーキュラーメーカーへの転換を目指しています。中期経営計画期間中に、環境関連投資を重点的に実施(2024年度までの3カ年で86億円を計画)し、サステナブル経営と連動した活動を推進します。

環境負荷低減の取り組み
基本的な考え方

サステナブル経営の主要推進事項である「気候変動への対応」、「資源循環型社会の実現」、「サステナブルな調達」の3軸を中心に環境負荷を低減していく全社的な取り組みを強化し、社会的価値と経済的価値の両立に努めています。「気候変動への対応」では、2030年までにCO2の排出量をScope1+2で合計35%以上削減(2013年BM比)を目標として、省エネ、創エネ、再エネに努めます。さらにエネルギーイノベーションの活用の検討を進め、環境に配慮した事業運営を推進していきます。「資源循環型社会の実現」では、サーキュラーファクトリー(守山工場)を筆頭に、全社の廃棄物の削減を図るため、国内全事業所を対象とした廃棄物の再資源化への取り組みを強化します。「サステナブルな調達」では再生/バイオマス原材料などの環境に貢献できる素材の活用を進め、サプライヤーとの関係性を高め、原材料のCO2排出量削減に取り組みます。これら資源循環、サステナブルな調達の取り組みを通してグンゼグループは環境配慮型商品の拡充とScope3の削減に努めていきます。

グンゼグループの環境技術、取り組みについて
①気候変動への対応(省エネ、創エネ、再エネ活用)

・ EMS(エネルギー管理システム)導入によるエネルギーロスの削減
・ ボイラー、空調機などのユーティリティ設備の高効率化
・新規建築物の高断熱化、高気密化による省エネ化(ZEB認証、CASBEE認証を取得)
・ 計画的な太陽光発電設備の設置
・ 低排出エネルギーの転換(重油からLPG化、電化へ)

江南工場(愛知県江南市)のZEB※オフィス紹介(エンプラ分野)

2023年2月、お客さまのここちよさや、従業員の働き甲斐・働きやすさにつなげたいという想いと考えが反映された、工場の顔となる新事務所が完成しました。
旧事務所は1959年竣工の、歴史を感じる建物でしたが、経年による不具合も出てくる中で、拡大する事業規模や取り扱い品種への対応として、スペースの確保・拡張が急務となっていました。そこで、生産エリアを拡張するために、工場棟にある会議室・事務所を集約し、事務所棟の建て替えを決定しました。建て替えに際しては、単に集約するだけではなく、デザインや快適性に加え、環境にも配慮する施設を目指しました。
建築デザインは、グンゼの歴史的建物の意匠を参考とした今昔融合の建物外観とし、調光・木目調などのアクセントも取り入れ、快適で過ごしやすい空間を演出しました。室内には、利便性・快適性に加えて、食堂のリニューアルにも注力。さまざまなスタイルの座席や、有名店とのコラボメニュー提供など、食事がリラックスできて楽しくなる工夫を行っています。また、ミーティング使用なども想定したレイアウトも、従業員のコミュニケーション向上に一役買っています。さらに環境配慮については、各種の省エネ施策を織込み、ZEB認証を取得することができました。
さまざまな特長、施策をちりばめた新オフィスによって、従業員のモチベーションアップを図り、お客さまにもグンゼの企業姿勢を理解いただくとともに、「環境に配慮した経営」を実践し、事業の持続的成長につなげていきます。

※ ZEB:Net Zero Energy Building
建物で消費するエネルギー収支をゼロにすることを目指した建物。江南工場の新事務所棟は削減率102%(省エネ53%、創エネ49%)を達成し、最高ランク「ZEB」認証を取得。

江南工場のZEBオフィス

江南工場のZEBオフィス

快適で過ごしやすい空間を演出

快適で過ごしやすい空間を演出

エンジニアリングプラスチックサイトへ
②資源循環型工場の実現

プラスチックフィルム分野の基幹工場である守山工場を資源循環型工場(廃棄物を出さずに資源を循環させる工場)に転換する取り組みです。将来的には、プラスチックフィルムを販売するメーカーから、リサイクルを基本としたサーキュラーメーカーとなることを目指しています。

サーキュラーファクトリー®の見学者受け入れ活動(プラスチックフィルム分野)

2023年4月に、太陽光や地下水のエネルギー活用、プラスチック廃材を出さない「ゼロ・エミッション」の実現、さらにサステナブル製品の生産のため、約4年の構想期間を経て守山工場に「サーキュラーファクトリー®」が完成しました。2024年5月末までのおよそ1年間で、約200企業(団体)1,200名弱の見学者を受け入れています。コロナ禍で営業担当者は顧客への訪問回数が減り、お客さまの課題やニーズをヒアリングする機会も減っていましたが、この活動をきっかけに環境対応に対する具体的な提案が進み、各種協業プロジェクトにつながっています。また、オンラインによる海外顧客向け工場見学会も実施し、リアルタイムでの対応が好評を博しています。
守山工場の管理事務所には、工場見学者情報を掲示するホワイトボードがあり、ほぼ余白なく埋まった月間見学表が日々更新されています。見学者は、お得意先さまが中心ですが、行政や地域関係者が多いのも特徴です。これまでは秘密保持の観点から、社外の方を工場に案内する機会はほとんどありませんでした。今回、新工場に通路まで設けて見学者を受け入れたのは、資源循環の取り組みは、一企業単独では実現が難しいためです。例えば、リサイクル回収は行政や地域関係者の協力が不可欠で、素材開発はリサイクル技術や廃棄物処理に長けた顧客の協力が必要です。資源循環の促進という意味では、業界全体を巻き込んでいく必要があります。そのため、敢えて新たな取り組みを開示する戦略に転換しました。
見学者の反応は好評で、顧客との資源循環型のモデルケースもできつつあり、こうした動きが今後の戦略に向けた足掛かりになると信じて、活動を続けていきます。

海外顧客に向けたオンライン説明

海外顧客に向けたオンライン説明

サーキュラーファクトリー®の外観

サーキュラーファクトリー®の外観

プラスチックカンパニーサイトへ
サーキュラーファクトリーに関する動画はこちら
③サステナブル調達

リサイクルポリエステルなどの再生原材料の使用、オーガニックコットンやパッケージのバイオマス化など、サステナブルな原材料使用率向上を目指し、積極的に環境配慮型商品の拡充を推進していきます。

繊維資材
リサイクルポリエステル100%のミシン糸
textile-materials
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プラC
リサイクル原料比率30%のハイブリッド収縮フィルム
plastic-materials
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グリーンファイナンスを通じた企業価値向上の取り組み

グリーンファイナンス・フレームワークの策定
グンゼグループはストラクチャリング・エージェントに選定した野村證券(株)の支援のもと、2022年度にグリーンファイナンス・フレームワークを策定しました。グリーンファイナンス・フレームワークとは、グリーンボンド・ローン原則/ガイドラインに基づき、資金使途を環境改善効果のある事業に限定して調達する資金の①資金使途の詳細、②プロジェクトの評価および選定のプロセス、③調達資金の管理、④レポーティングについてグンゼグループの方針をまとめたものです。
本フレームワークは、(株)日本格付研究所(JCR)から当該原則/ガイドラインへの適合性について、最上位の「Green1(F)」の評価を取得しています。また、資金使途であるプラスチックカンパニー守山工場の「サーキュラーファクトリープロジェクト※1」は、評価取得時点において日本初の資源循環型工場の取り組み全体での評価となっています。

グリーンローンの実行

2022年9月に(株)三菱UFJ 銀行から、本フレームワークを活用したシンジケーション方式タームローンの「グリーンローン」による資金調達を実行しました。資金使途は、サーキュラーファクトリーのCASBEE※2 Aランク取得建屋の建設および新設ライン設置、BELS※3 5つ星およびZEB※4認証を取得したエンプラ事業部江南工場オフィスの建設であり、調達した資金は2023年4月までに全額充当しました。また、本ローンの資金使途の環境改善効果が、二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(グリーンボンド等促進体制整備支援事業)の交付要綱の要件を充足していることから、環境省が選定した一般社団法人グリーンファイナンス推進機構より、補助金の交付を受けています。

今後の方針

今回策定したフレームワークは、グンゼグループの環境関連投資を網羅する内容となっており、当該投資の資金調達のため、本フレームワークを活用したグリーンボンド、グリーンローンの実行が可能となっています。また、社会のサステナブル意識のさらなる高まりや、日銀の政策変更に伴う調達環境の変化により、今後、通常の資金調達手段に対するサステナブルファイナンスのコスト優位性が向上するのではないかと考えています。グンゼグループは本フレームワークを活用した資金調達を積極的に実行し、社会的利益と経済的利益の双方を追求していきます。

※1 サーキュラーファクトリープロジェクト:プラスチックフィルム分野における、リサイクルに適した製品開発と再原料化技術の確立および廃プラスチックの再利用により、廃棄物を出さずに資源循環を実現する工場プロジェクト。
※2 CASBEE:建築環境総合性能評価システム。省エネルギーや環境負荷の少ない資機材の使用といった環境配慮や室内の快適性や景観への配慮なども含めた建物の品質を総合的に評価し、5段階で格付けする手法。
※3 BELS:建築物省エネルギー性能表示制度。国土交通省が定めた「建築物の省エネ性能表示ガイドライン(建築物のエネルギー消費性能の表示に関する指針)」に基づき、省エネルギー性能を客観的に評価し、5段階の星マークで表示する制度。
※4 ZEB:ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング。快適な室内環境を実現しながら、再生可能エネルギーによる創エネルギーと、断熱性を高めた構造やセンサーなどを駆使した省エネルギーにより、建物で消費する一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物。

CO2削減と売上の両方に貢献できるカーボンネガティブ製品

緑化事業におけるCO2吸収・固定量が、アパレル事業で商品展開するBODYWILDの「立体成型3D-MADEボクサー」と「カットオフ®ボクサー」の生産で発生するCO2排出量よりも上回ることを、九州大学都市研究センターとの産学共同プロジェクトにより明らかにしました。これにより、第三者機関である一般社団法人計量サステナビリティ学機構による「CARE認証」※を取得し、環境貢献できるカーボンネガティブ製品として商品化しました。

※ CARE認証CARE認証は、製品やサービスがつくられる過程で労働環境や自然環境に適切な配慮がされているかどうかを、目に見えるかたちにできる世界初の取り組み。CARE 認証には人権と環境の枠があり、グンゼはCARE認証(ENVIRONMENT:環境)を取得。

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「御堂筋のイチョウ並木」に対する支援活動

グンゼは、2018年9月の台風21号による御堂筋(大阪市)のイチョウ並木の甚大な被害を受け、このイチョウ並木を健全に保存し、後世に伝えていくことを目的として、2019年12月に大阪市と「御堂筋におけるイチョウの供給等に関する協定」を締結しました。この協定に基づく要請に応え、2021年度は緑化事業を行うグンゼグリーン(株)を通じて、対象エリアとなる御堂筋(道頓堀橋南詰~難波区間)の植え替えが必要なイチョウ14本を提供しました。今後も継続的に提供を実施していきます。

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御堂筋のイチョウ

大阪・関西万博のメイン会場「静けさの森」への植栽

2025年4月に開幕する大阪・関西万博に向け、メイン会場の「静けさの森」に植栽される高さ3~10mに達するさまざまな樹木を500本以上お届けしています。さらに、旧大阪万博会場などに植えられている1000本近くの樹木を、静けさの森へ移植する「命のリレー」では、繊維資材分野で開発した特殊素材の活用による新しい移植工法が採用されています。

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旧大阪万博会場から届ける樹木の移植準備