研究開発戦略
技術立社としてお客さまのニーズに応えるソリューションを追求し、グローバルな成長戦略を推進
創業以来培ってきたグンゼの製造資本 グンゼは創業130年を迎える歴史ある企業です。創業当初より製糸業として「精良優美な糸づくり」の理念を掲げ「品質第一主義に徹する」「共存共栄を実践する」「一貫体制を確立する」という3つの基本方針のもとで事業を展開し、着実な成長と発展を遂げてきました。
製造資本における強みと課題 グンゼではこれまでに培ってきた技術資産を活かし、アパレル事業を起点とした技術をメディカルやエンジニアリングプラスチックスといった成長分野に展開しています。例えばメディカル事業においては「生体吸収性」をキーワードに、アパレルで培った「編立技術」「糸加工技術」を応用し、医療現場のニーズと融合させることで、組織補強材などの独自性ある製品を開発し、他社にない差異化製品へと進化させています。
「VISION 2030 stage2」における取り組み
中期経営計画「VISION 2030
stage2」(2025~2027年度)においては、製造資本の高度化を通じて「品質改善の強化」や「生産効率の追求による原価低減」を推進し、加えて「持続可能な生産体制」の構築を実現します。
その具体的な取り組みは次の2点です。
①自働化技術、デジタル技術を活用したスマート工場の実現
画像処理技術、センシング技術、ハンドリング技術といった自働化技術、さらにはAIを含むデジタル技術を活用し、生産プロセスおよびサプライチェーン全体の可視化と最適化を図ります。
人に依存していた工程を見直すことで、技術伝承の課題や労働力不足といった経営課題への対応を進め、生産性と品質の向上を図ります。
②環境負荷を最小限に抑える生産プロセスの構築
再生可能エネルギーの活用や資源循環の考え方を国内・海外の全工場に導入し、製造段階での環境負荷の低減と同時に利益創出の両立を図ります。例えばプラスチックカンパニー守山工場でのサーキュラーファクトリー®のように、環境配慮を前提とした生産の仕組みづくりを推進しています。
こうした取り組みを通じてグンゼはものづくりの根幹である製造資本の強化を図り、将来にわたって持続可能、かつ競争力のある企業体制を築いていきます。また、社会課題の解決にも貢献しながら、より良い製品・サービスをお客さまに提供し続けます。
さらなる製造技術の革新
グンゼでは前中期経営計画「VISION 2030 stage1」から、自働化技術およびデジタル技術を中核とした製造技術の革新に取り組んできました。
「stage2」では、これらの技術をさらに進化・強化し、全社的に展開していきます。
自働化技術については、画像処理・センシング・ハンドリングといった要素技術を組み合わせ、人への依存度が高い工程の自働化を推進してきました。
「stage1」では、アパレル製品の接着縫製ラインにおいて、柔らかい繊維生地を1枚ずつ取り出すハンドリング技術、生地を所定の位置に搬送・配置するセンシング技術、接着剤を適切な場所に塗布する画像処理技術を組み合わせることで、自働化ラインの構築に成功しました。
「stage2」では、アパレル事業での難易度の高いミシン縫製工程に加えて、メディカル事業では吸収性材料を使用する医療製品の製造工程にもこれらの技術を応用し、2025年度下期より本格稼働を予定しています。
また、全ての事業部門を対象に、人の依存が顕著な検査工程において自働化を推進します。
現在、多くの検査が熟練者の目視に依存していますが、今後の人財確保難を見据え、画像処理や自働搬送技術を活用し、検査精度・スピードの向上と人への負荷低減を図ります。
デジタル戦略の強化
これらと並行してデジタル戦略も強化しています。「stage1」では営業部門や間接部門にデジタル技術を導入し、業務プロセスを再設計しました。
経営ポータルによる経営数値の可視化や、RPA(Robotic Process Automation)による定型業務の省力化、在庫削減に向けたKPI
管理と可視化など、企業体質の進化と省人化を進めています。
「stage2」では、AIの活用によりデジタル戦略をさらに強化します。
全社的にはChatGPTの機能を活用した知識共有や業務支援を推進し、保全業務にはRAG(Retrieval-Augmented Generation)技術を応用したナレッジシステムを構築します。
また、生産やSCM領域ではAIによるスケジューリングの最適化、在庫データのリアルタイム監視により、在庫切れや過剰在庫を防止し、保管コストの削減を目指します。
製造技術の革新を通じて、グンゼは持続可能かつ競争力のあるモノづくりを実現し、社会とお客さまに新たな価値を提供していきます。
アパレル製品の接着縫製ラインの自働化
差異化技術の発展・創出と“知的財産化”による知的資本の持続的な強化
グンゼグループの基盤技術と知的資本
グンゼグループの基盤技術は、「繊維加工技術」「樹脂加工技術」「製造技術×装置開発」であり、これらの「蓄積された技術」を事業基盤の一つとして、グンゼの知的資本と位置付けています。
各事業部門では、顧客のニーズに基づいた商品開発と技術開発に積極的に取り組み、既存技術のさらなる強化と発展を進めています。
一方、本社機能部門である技術開発部門および研究開発部門では、全社横断的・中期的な視点で基盤技術の強化と開発を推進しています。
技術開発部門では各種プロセスのスマート化を通じた原価改革を、研究開発部門では新たな差異化技術の創出を担っています。
これらの技術成果を知的財産として管理・活用することによって、グンゼの知的資本の持続的な強化を図っています。
全社研究開発費
グンゼの基礎技術
研究開発体制と注力領域
研究開発部門では、2025年4月に体制を改編し、注力事業分野である機能ソリューション事業、メディカル事業、アパレル事業の事業基盤を強化するべく、三つの研究室体制を開始しました。
各研究室では、それぞれの分野において原材料および加工技術の研究開発に注力し、新たな高付加価値商品群を生み出すべく、新規差異化技術の創出に挑戦しています。
機能材料研究室では、これまでに積み重ねてきた技術をさらに融合・進化させながら、高機能樹脂を活用した複合材料や多層材料の材料設計および成形加工技術の研究開発を進めています。
医療材料研究室では、医療現場のニーズに応える独自性と高付加価値を兼ね備えた製品を生み出すべく、生体吸収性材料およびその加工技術の研究開発に取り組んでいます。
繊維研究室では、“ここちよい商品”の実現に向けて、蓄積してきた繊維改質技術や生地加工技術をさらに発展させるべく取り組んでいます。
また、機能ソリューション事業で培った材料設計や原料加工の技術を活かし、衣料用途に加えて産業用途向けの高機能繊維の開発にも意欲的に取り組んでいます。
こうした研究開発活動においては、社外の企業やアカデミアとの連携を積極的に広げるとともに、より効果的かつ効率的な取り組みを目指し、グループ内の横断的な連携も一層強化しています。
“知的財産化”の取り組み
知的資本として位置付けている「蓄積された技術」を確かなものとするためには、個々人に属する知識やアイデアといった暗黙知を文書化し、知的財産権やノウハウとして組織的に管理できる状態、すなわち“知的財産化”することが重要です。
加えて、全社戦略および事業戦略との整合性を保ちながら、この知的財産群を継続的に再構築していくことが、グンゼグループの持続的な成長と発展に欠かせないと考えています。
この考えに基づき、本社機能部門として知的財産部門を設置し、全社戦略に沿った知的財産化活動を計画・推進しています。
特に、事業基盤の強化を目指して「強い知的財産群の構築」に力を入れており、注力事業分野における自社の知的財産群や市場・競合の動向を分析するとともに、こうした分析結果を各事業部門と共有して、さまざまな情報と組み合わせながら、強化すべき技術領域を明確にし、領域ごとの方針を策定しています。
そのうえで、部門間で連携しながら取り組みを進めています。
また、知的財産化活動と研究開発部門および各事業部門の橋渡し役として、各部門の開発責任者をDPO(Division Patent
Officer)に任命し、知的財産部門とDPOが連携することで、事業戦略との整合性を高めつつ、知的財産化や権利侵害対応といった知的財産に関する管理・意思決定の迅速化を図っています。
知的財産の拡充
知的財産の創出を積極的に奨励する取り組みとして、経営に顕著な貢献を果たした特許などの発明者に対し、グループ独自の冠賞である「ダ・ヴィンチ賞」を社長より授与しています。
この表彰式は、社長自らが発明者の想いや開発背景に耳を傾ける対話形式で開催し、技術者への敬意と感謝の気持ちを込めた恒例行事として位置付けています。
近年では、資源循環技術、とりわけプラスチック材料のリサイクル分野において、事業部門と知的財産部門がより一層の連携強化を進め、知的財産の拡充に力を注いでいます。
こうして構築された知的財産群は、持続可能な社会の実現に向けたグンゼグループの積極的な貢献を支える重要な基盤として、今後ますますその価値を高めていきます。
| 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | ||
|---|---|---|---|---|
| 保有特許 | 国内 | 655 | 691 | 680 |
| 海外 | 249 | 249 | 228 | |
| 保有意匠 | 国内 | 200 | 216 | 248 |
| 海外 | 8 | 10 | 10 | |
| 保有商標 | 国内 | 1,946 | 1,934 | 1,914 |
| 海外 | 796 | 803 | 802 | |
令和7年度 知財功労賞を受賞
令和7年度「知財功労賞」において、グンゼグループの知的財産権制度の活用に関する取り組みが評価され、特許庁長官表彰を受賞しました。
評価ポイントは以下のとおりです。
①各部門の開発責任者をDPOに任命し、事業部門における知的財産活動の中核として機能させている点
②プラスチックリサイクル技術を重点テーマに位置付け、当該分野における知的財産の創出を積極的に推進している点
③各事業において、特許・意匠・商標を組み合わせた「知的財産ミックス」の活用を図っている点
