研究開発戦略

製造資本における強みと課題 グンゼではこれまでに培ってきた技術資産を活かし、アパレル事業を起点とした技術をメディカルやエンジニアリングプラスチックスといった成長分野に展開しています。例えばメディカル事業においては「生体吸収性」をキーワードに、アパレルで培った「編立技術」「糸加工技術」を応用し、医療現場のニーズと融合させることで、組織補強材などの独自性ある製品を開発し、他社にない差異化製品へと進化させています。
またエンジニアリングプラスチックス分野のフッ素樹脂製フィルターサポート材についても、素材そのものの特性に加えて生地としての構造的・用途的な価値を付加することで、アパレル由来の技術を新たな分野へと展開する好事例となっています。このようにグンゼの強みは技術領域の垣根を越えた応用・転用にあります。「機能」と「構造」の両面から新たな製品を創出できる「技術の横断力」こそがグンゼの競争力の源泉であると考えています。
一方で、近年は製造業を取り巻く事業環境が急速に変化・複雑化し、従来の発想・考え方だけでは持続的な競争力の維持が困難になってきました。グンゼにおいても、ものづくりの基盤である「製造資本」の強化は必要不可欠であり、経営上の重要課題として取り組んでいます。

①自働化技術、デジタル技術を活用したスマート工場の実現 画像処理技術、センシング技術、ハンドリング技術といった自働化技術、さらにはAIを含むデジタル技術を活用し、生産プロセスおよびサプライチェーン全体の可視化と最適化を図ります。
人に依存していた工程を見直すことで、技術伝承の課題や労働力不足といった経営課題への対応を進め、生産性と品質の向上を図ります。

②環境負荷を最小限に抑える生産プロセスの構築 再生可能エネルギーの活用や資源循環の考え方を国内・海外の全工場に導入し、製造段階での環境負荷の低減と同時に利益創出の両立を図ります。例えばプラスチックカンパニー守山工場でのサーキュラーファクトリー®のように、環境配慮を前提とした生産の仕組みづくりを推進しています。
こうした取り組みを通じてグンゼはものづくりの根幹である製造資本の強化を図り、将来にわたって持続可能、かつ競争力のある企業体制を築いていきます。また、社会課題の解決にも貢献しながら、より良い製品・サービスをお客さまに提供し続けます。

デジタル戦略の強化 これらと並行してデジタル戦略も強化しています。「stage1」では営業部門や間接部門にデジタル技術を導入し、業務プロセスを再設計しました。
経営ポータルによる経営数値の可視化や、RPA(Robotic Process Automation)による定型業務の省力化、在庫削減に向けたKPI 管理と可視化など、企業体質の進化と省人化を進めています。
「stage2」では、AIの活用によりデジタル戦略をさらに強化します。
全社的にはChatGPTの機能を活用した知識共有や業務支援を推進し、保全業務にはRAG(Retrieval-Augmented Generation)技術を応用したナレッジシステムを構築します。
また、生産やSCM領域ではAIによるスケジューリングの最適化、在庫データのリアルタイム監視により、在庫切れや過剰在庫を防止し、保管コストの削減を目指します。
製造技術の革新を通じて、グンゼは持続可能かつ競争力のあるモノづくりを実現し、社会とお客さまに新たな価値を提供していきます。

アパレル製品の接着縫製ラインの自働化 アパレル製品の接着縫製ラインの自働化

グンゼグループの基盤技術は、「繊維加工技術」「樹脂加工技術」「製造技術×装置開発」であり、これらの「蓄積された技術」を事業基盤の一つとして、グンゼの知的資本と位置付けています。
各事業部門では、顧客のニーズに基づいた商品開発と技術開発に積極的に取り組み、既存技術のさらなる強化と発展を進めています。
一方、本社機能部門である技術開発部門および研究開発部門では、全社横断的・中期的な視点で基盤技術の強化と開発を推進しています。
技術開発部門では各種プロセスのスマート化を通じた原価改革を、研究開発部門では新たな差異化技術の創出を担っています。
これらの技術成果を知的財産として管理・活用することによって、グンゼの知的資本の持続的な強化を図っています。

全社研究開発費

グンゼの基礎技術

expenses
研究開発体制

知的資本として位置付けている「蓄積された技術」を確かなものとするためには、個々人に属する知識やアイデアといった暗黙知を文書化し、知的財産権やノウハウとして組織的に管理できる状態、すなわち“知的財産化”することが重要です。
加えて、全社戦略および事業戦略との整合性を保ちながら、この知的財産群を継続的に再構築していくことが、グンゼグループの持続的な成長と発展に欠かせないと考えています。
この考えに基づき、本社機能部門として知的財産部門を設置し、全社戦略に沿った知的財産化活動を計画・推進しています。
特に、事業基盤の強化を目指して「強い知的財産群の構築」に力を入れており、注力事業分野における自社の知的財産群や市場・競合の動向を分析するとともに、こうした分析結果を各事業部門と共有して、さまざまな情報と組み合わせながら、強化すべき技術領域を明確にし、領域ごとの方針を策定しています。
そのうえで、部門間で連携しながら取り組みを進めています。
また、知的財産化活動と研究開発部門および各事業部門の橋渡し役として、各部門の開発責任者をDPO(Division Patent Officer)に任命し、知的財産部門とDPOが連携することで、事業戦略との整合性を高めつつ、知的財産化や権利侵害対応といった知的財産に関する管理・意思決定の迅速化を図っています。

知的財産の拡充 知的財産の創出を積極的に奨励する取り組みとして、経営に顕著な貢献を果たした特許などの発明者に対し、グループ独自の冠賞である「ダ・ヴィンチ賞」を社長より授与しています。
この表彰式は、社長自らが発明者の想いや開発背景に耳を傾ける対話形式で開催し、技術者への敬意と感謝の気持ちを込めた恒例行事として位置付けています。
近年では、資源循環技術、とりわけプラスチック材料のリサイクル分野において、事業部門と知的財産部門がより一層の連携強化を進め、知的財産の拡充に力を注いでいます。
こうして構築された知的財産群は、持続可能な社会の実現に向けたグンゼグループの積極的な貢献を支える重要な基盤として、今後ますますその価値を高めていきます。

グンゼグループの国内外特許・意匠・商標の保有数 (件)
2022年度 2023年度 2024年度
保有特許 国内 655 691 680
海外 249 249 228
保有意匠 国内 200 216 248
海外 8 10 10
保有商標 国内 1,946 1,934 1,914
海外 796 803 802
令和7年度 知財功労賞を受賞

左:小野洋太 特許庁長官
右:佐口社長